契約




 その日は花見・・・だったはずだが、季節が狂ってしまったかのように関東に雪が降った。 俺は予定の花見が無くなったため、憂さ晴らしに しこたま飲んでしまっていた。
 電車の駅を出て、路地裏に入ると、少年が白い壁に落書きをしていたので ついつい一緒になって落書きをしてしまった。 どうも、そのときに殴り書きをした模様がまずかったのか、良かったのか・・・
 もう一度描けと言われても二度とかけないだろうな。ま、とりあえず皆のためにその時の報告をしておくから、よおく勉強しておけよ。

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 俺が落書きを終えて、タバコに火を着けた時だった。

「Jennyさん・・・ちょっとすみません・・・Jennyさん・・・」
「お前は誰だ。ハンドルネームで呼びやがって」
「失礼しました。訳あって名乗れませんが、貴方にお願いがあってやってきました」
「TVには出さんど」
「いいえ、そのようなお願いではありません。マスターからJennyさんに・・・これを・・・」

 男は俺に妙な包みを押し付けて路地裏の闇に溶け込むように消えた。桜の季節だというのに、雪の降る、おまけに薄気味悪い男まで付録で付いて来るといったツイてない夜のことだった。

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 二日酔いの翌朝、小汚い包みが部屋の中に転がっているのに俺は気が付いた。
昨夜のことなど覚えていないので、なんでこんな包みが転がっているのか、記憶がさだかでない俺は悩んだが、とりあえず包みをあけてみることにした。

「なんじゃこりゃ・・・こぎたねえ壷じゃのお・・・顔を書いたらハクション大魔王・・・」
そうつぶやいた瞬間、壷の中から(と思うが)ホラーSFにでてくるようないかにも「悪魔」って感じのやつが出てきたのだった。

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン・・・て言わんのか?」
俺は平静をよそおい (だいぶびっくりしたが) 尋ねた。

>アレハ マンガダ オマエハ テレビノ ミスギダ

「やかましい!ほっとけ!それより何の用だ!いきなり出てきおって!」

>ハラガヘッタ ダカラ ケイヤクヲシタイ

「契約?そりゃあ昔からその言葉は悪魔という単語について回るようだが・・・」

>テットリバヤクイエバ オマエノ タマシイヲ モライタイ

「何で俺のなんだ!」

>ナントナクダ・・・

「お前なんかにくれてやる物はありゃせんぞ!」

>ソウイウナ タダ トハ イワナイ

「・・・・・・」

>オマエノ ネガイヲ ヒトツダケ カナエテヤル・・・ソノ ミカエリニ タマシイヲ・・・

「おっけえー!」


>ナニ?モットヨクカンガエロ!タマシイダゾ!タマシイ!

「そんなもん、夏になりゃあいくらでもTVにでてくらあ。だからオッケーだってえの!」

>ナンセ コンナニハヤイヘンジハ ハジメテダッタモンデ・・・スミマセン

「ええけん はよおせえやあ 契約を!」


 あわてた悪魔とおぼしきやつは何やら呪文と密教の手印に似たようなことを始めた。興味深く見ているうちに、床の上に「訳のわからん模様」に重ね書きされた「文字」らしきものが浮かびあがった。
 そして奴は言った。

>コノ マホウジンにマモラレタケイヤクショニ オマエノカミノケヲ イッポンタラシ ワレ ナンジトココニ ケイヤクセン ト トナエルノダ

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 そして、俺は契約した。もちろん俺の願いはひとつかなえてもらったさ。
「魂?」あるのか無いのか知らんけど、あるのなら俺はまだ持ってるはずさ。
 何故?この俺様を誰だと思ってるんだ?Jenny様だぜ!あんなアナクロの化け物に負けるはずが無いってえの!
 化け物はどうなったかだって?今は俺の部屋を掃除してるかなあ・・・昨日はちょっとジョージア州まで宅急便を届けさせたんだったっけ?

 はははっ・・・あいつは一生(寿命あるのかどうか判らんが)俺の奴隷さ。何故だって?
契約があるからさ。その契約の願い事に俺はこう願ったのさ

 「かなう願い事を100個に増やせ」とね。まあ、そろそろ残りが10個切るごろだから、また増やさないとな。へへへっ・・・人間様をなめるからこうなるんだぜ。

 今や地球上で一番の最恐生物だぜ・・・

・・・ 人間様はよ・・・

 


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