西暦1998年の夏、その壮絶なる戦いは、再び始まった。

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西暦1996年6月。自宅の雨戸、及びアルミサッシの桟に直径3〜4mm 長さ10〜12mm程の黒光りする物体を発見。その時は「鳥の糞にしては ちょっと変わってるな」ぐらいにしか思わなかったのだが、日、一日とその黒い物体は増殖を続け、減ることが無い。当然毎日掃除するのだが、だんだんと その黒い物体は数も大きさも増していくのである。
はたしてその黒い物体の正体は何なのであろうか?まずはそこから始まるに違いない!と珍しく「まとも」な考え方をした私は、昨夜食ったヤキトリの残りの串で、その黒い物体を砕いて見ることにした。

黒い物体の正体が判明した。てっとりばやく言うと「糞」であり、「鳥の糞」 ではなかったのである。なぜ鳥の糞で無いかというと、鳥は「小」も「大」も いっしょくたにひりだすことしか出来ない構造のため、こういった固形で形の一定の「糞」は作り出すことが不可能なのである。
では、鳥でなかったら何なのだ?「糞」をバラバラにしていくと、昆虫の羽とか目玉らしきものとかばかりなので完全な肉食である。昼間は姿が見えず、肉食の動物という条件がつくとこりゃあもう日本では「蝙蝠」でしか無い。
そう、奴は我が家の軒下の通気のための隙間に居候しており、あろうことか 居候のぶんざいで桟を便所と決めてしまったのである。
「居候、三杯めにはそっと出し」という川柳を知るはずもなく、正しい居候の仕方を知らん奴等にはちゃんと教育をしなければならない。しかし、学生時代にやった教育実習はいくらアホばかりだったとしても、日本語の通じる相手であった。 よって「言葉がだめならば体で覚えてもらおうじゃないか!今日ここに私は居候のぶんざいにもかかわらず我が家の桟および雨戸を便所と化すおまえたちに宣戦布告する!」
こうして長き戦いの幕は切って落とされたのであった。

うごめく蝙蝠達 「強い方の味方をする」という現代を生き抜くために必要不可欠の根性を持ちながら、その先行思想もかつての鳥類と地上動物との戦いが行われた時代の思想とはマッチせず、どちらからもはじき出されてしまった蝙蝠であるが、やはり彼らはしぶとく生き抜き、現代に至る。方や人間はというと、いや、ここでは日本人に限定して語ることしか出来ないので、「日本人はというと」に言い直すことにする。
かつては紙と木で出来た家にしか住んでいなかったため、隙間だらけの家屋であった。隙間だらけと言うことは、蝙蝠だけでなく、ネズミもスズメも、それを狙うネコもヘビも全部入り込めた家屋であったのだ。
ところが今の鉄とセラミックとわけのわからん材質の家には隙間が無い!通気のために「わざわざ開けている」そうだ。(我が家のメーカーのセールス談。非常に嘘くさい説明)よってこの隙間にかろうじて入れる蝙蝠が目をつけて居候を決め込んだ次第である。紙と木で(竹だったかな?)出来た家は、狼さんの一吹きで吹き飛んでしまったというイソップ(グリムだったか?)の謀略にひっかかった日本人は、次々と鉄とセラミックの家を建てはじめ、気密を良くしすぎたためにわざわざ通気のために蝙蝠さんのスペースを作ってしまったわけである。
さて、頑丈で外敵の入って来ない住処をわざわざ作ってやった人間ではあるが、この居候がおとなしく、奇麗に住んでいさえすれば問題にならなかったわけであるが、癖の悪い人間と同居すると人間様に近くなるのか、「我が家にさえゴミが無ければいい」という思想で、住居の外に排泄物を撒き散らすようになってしまい、とうとう大家の怒りを買ってしまったのであった。
これは、その怒り狂った大家と、蝙蝠一家との2年以上続く壮絶な戦いを記録したものである。

作戦1 蝙蝠の玄関を探せ!

蝙蝠よ、お前ら楽しそうだな まず、撒き散らされている糞、壁、雨戸にこびりついている糞を掃除し、量的に多い個所をとりあえず出入り口と仮定した。隣の家から脚立を借りてきて、仮定した場所の軒下を見ると、雨戸レールの上に大量の糞がある。ここで仮定は限定となり、この場所を集中攻撃することに決定。

作戦2 効果的罠を探せ!

蝙蝠の武器は何といっても超音波レーダーである。この性能はカスミ網にもかからない程であるそうで、飛行中を攻撃するパトリオットミサイルを持たない大家にとって、飛行中の蝙蝠は撃墜不可能と判断。戦闘機の共通弱点は、離着陸の時には何にも出来ないことであることから、この状態の蝙蝠を狙うトラップをしかけることに決定。ホームセンターに足を運ぶ。「タック」にはそれらしきものが何も無く、「ジュンテンドー」において2セット購入。なんとゴキブリホイホイの大型版「ねずみホイホイ」があるのだ。蝙蝠はネズミの仲間だと聞いたような気がするというだけの安易な選択であった。

作戦3 ニイタカヤマノボレ?

雨の日には、蝙蝠のエサである虫があまり飛び回らないので、気象庁との相談で、晴れの日が続く週を作戦決行日と決めた。
その日の日没1時間前、 出入り口の断定した場所の真下の壁に「ねずみホイホイ(以下ねずほいと略)」をガムテープで貼り付け、雨戸を締めて準備完了。
夕食を終えて一服していた頃「ギャギャギャ」とも「ビチビチビチ」とも聞こえる音が部屋に届いた。「まさかもう掛かっているはずはないだろう」と外へ出てみると.....
        
ワレ.キシュウニ.セイコウセリ

本日夕刻より明朝までの戦果、12匹をトラップにてしとめる。

作戦4 第二玄関追撃作戦
哀れ、蝙蝠

最初に仕掛けたトラップには3日で20匹程がかかった。「まあ、よくもこんなに狭い中に」と思ったが、敵の図体は親指と人差し指で作る円程の大きさなので20匹を団子にしてもせいぜい3号ソフトボール程度にしかならない。実際、トラップにかかった敵は、体中に粘着剤をへばりつかせ、もがいているうちに、他の蝙蝠とくっついてしまい、2〜3匹がくっついて重みで下に剥がれ落ちてはいるものの、離れることができずにケンカしている姿はまさしく「団子」であり、(軍手で取ってしまったために、軍手ごとビニール袋に捨てなければならなかったのは失敗であった)「当分団子は食えんな」とつぶやく大家であった。
そして数日、糞も落ちなくなって、殲滅できたか?と喜んでいたら、敵は玄関を変更しており、何と大家の玄関上を玄関にしてしまっていた。
第一玄関のトラップはそのままに、第二玄関部にもトラップを仕掛けることにした。

終戦

全三十数匹の戦死者を焼却し、1996年 第一次蝙蝠大戦は幕を閉じた。しかし、戦いというものは常に空しく、勝った大家にしても、壁、窓、雨戸に、のたうち、暴れまわった蝙蝠の残した粘着剤の掃除が待っているのであった。

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1997年、再び蝙蝠の糞を発見する。しかし、偵察隊なのか、侵略本隊なのかが不明のため、かねて用意していた最新兵器を設置することにした。
名付けて「アンチ、バット、スタンガン」略してABS。どっかで聞いたような名前である。これは、ストロボ付きの使い捨てカメラの回路部分を取出し、少々改造し、電極にさわると「バチッ!」と火花が飛ぶ程の威力のスタンである。
(改造中誤って触ってしまって指先に焦げた穴を作ってしまった経験上絶対効果あり)+と−極用の銅線を約1cmの間隔を保って仕掛けていく。なんか本当に戦争やってる気分になってしまう。危険だ。
夕方電池をセットする。「キュイーン」という充電音をかすかに発し、新兵器は作動を始めた。

朝、新兵器はエネルギー切れで活動を停止していたが、蝙蝠の糞爆弾も確認はできなかった。2〜3日電池を入れ替えて作動さしていたが、効果の程は不明のまま、侵入の形跡も無いために、電池を入れることなく一夏過ぎ、新兵器はその役目を閉じた。

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第二次蝙蝠大戦勃発!

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1998年6月 見慣れた、いや、見飽きた黒い物体が我が家の玄関にぽつり ぽつりと現れ始めた。2年前の第二玄関口下である。しかし、2年前に比べると 数は少ないため、玄関ポーチの明かりに惹かれて飛んでくる虫を狙っているのかと、ほっておいたところ、日一日と数が増えているようである。おまけに朝露と思っていた雫は、蝙蝠の小便のようだ。草木に朝露が降りていない日でも玄関のドアとたたきが濡れているのである。敵はとうとう本格的に空爆を開始したと判断。対策本部を設置することになった。

図解!蝙蝠くん

昨年使用の最終兵器はすでにスクラップとして、危険物回収日に放出してしまっており、参謀本部は2年前のトラップ作戦をもう一度試みることに決定。しかし、前回とまるっきり同じ事をやっても敵の体型からすると第三第四の玄関を作られる可能性があるため、まずその第三玄関の可能性をつぶすことにした。


シーリング作戦 0705

蝙蝠玄関を既知の第一と第二だけに限定させるため、それ以外の隙間を、新聞紙を折って厚みを作り、家の外周分詰め込んでいった。脚立に上り、クソ暑い日差しの中で半ば酸欠になりながら約1時間かけて隙間を塞いでやり、ねずホイを設置した。
翌日、2年前とはやはり逆の第二だった側で3匹。第一側で1匹。次の日も第二側で4匹。次の日は2匹。1匹。1匹。そして、一匹も掛からなくなった。

トラップに掛からなくなって1週間。完全勝利宣言をするべく見上げた我が家の二階の庇にうごめく黒い影!

敵は二階に引っ越してしまっていたのだ!わが陣営の完全勝利のためには、屋根裏に入り、背後より襲撃する方法しか残っていないのである。
決行日をいつにするか。しかし今回勝利しても、いつまた侵略されるか解らない状態のため、眠れない日々が続き、睡眠不足で出勤する今日このごろである。

どこ、どこ、どこから来るのか黄金バット。・・・・蝙蝠だけが知っている。

END
おしまい
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